何の映画観ようか。


補欠は観たい映画あるの?


そのあと、お昼は何を食べようか。


補欠は、何食べたいの?


もう少し、あと少しだけ、待ってて。


サイレンの音が、みるみるうちに近づいて来る。


手を伸ばす。


そして、虚しく空を切る。


光が細かく砕けて、地を照らす。


どくん。


どくん……どくん……とく……ん。


『翠』


ハッとした。


再び、頭に響いた懐かしい声。


『行こう、翠』


何、言ってんの?


どこに行くっての。


ダメだよ、あたし、これから行かなきゃなんないとこがあるのに。


『さあ、行くよ』


だから、あたし……。


『もう、時間だ』


次の瞬間、頬を何かがするりと伝い落ちた。


本当は……分かってるの。


あたしの、決意の涙だった。


目の前が滲んで霞んで行く。


そうか。


そうだったのか。


本当は、もうさっきから、分かっていた気がする。


空に手を伸ばし、あたしは泣いた。


やっと、分かった気がする。