「恥ずかしくてさ。真面目に逃げて帰ろうかと思ったしな。店員のねえちゃんから」


――あ、さっきの補欠さん!


「なんて、しっかり覚えられてたし」


あたしは目を見開いた。


「あ! それ……」


「まじで、死ぬほど恥ずかしかった。これ買うの」


真っ青な包装紙から飛び出したのは、


「欲しかったんだろ? これ。なくすなよ」


「これ……え、何で?」


クリアピンクとクリアブルーの、イルカの携帯ストラップだった。


「翠は女だからピンクな」


「うそ……買ってくれたのか? だってこれ、補欠、恥ずかしいからやだって言ってたじゃんか」


「あー、うん」


クク、と笑った補欠があたしの髪の毛をそっと撫でた。


「でも、翠は欲しかったんだろ? じゃあしょうがねえよな。お揃いでつけようぜ」


そして、あたしから携帯を取って、ストラップをつけてくれた。


「ほら、これでいいだろ。だからもう、勝手に居なくなったりすんなよ」


「う……ん。あの、補欠……」


「ん?」


「……あんがとう」


「うん」


補欠も自分の携帯電話にクリアブルー色のストラップをつけて、とてつもなく恥ずかしそうに笑った。


「げ……想像以上に恥ずかしいもんだな、お揃いって。健吾に見つかったら間違いなくバカにされるんだろうな」


なんて、補欠はそそくさと携帯をポケットに押し込んだ。


「なあ、補欠」


その手を捕まえて、あたしはぺこりと頭を下げた。