あまり広すぎると、困るから。


また迷子になったら、今度は見つけてもらえないかもしれないから。


「ねえねえ、補欠、聞いてもいい?」


「うん、何?」


「例えば」


あたしは、水槽を見上げながら聞いた。


「無限大に広い宇宙で、あたしが迷子になっても、見つける自信ある?」


はぐれても、すれ違っても、携帯電話が使えなくても、またこうして再会できるかなあ。


「さあ……どうだろうな」


「なんじゃそのへタレ発言は!」


曖昧な返事にムカッとして視線を戻すと、


「……え、あれっ? 補欠?」


そこにあった補欠の姿はなかった。


「補欠?」


「うん、どうした?」


でも、ちゃんと返事は返ってくる。


「どうしたじゃねえよ! どこいんの?」


ぐるりと見渡してみても、補欠の姿はない。


なんて不安なものなんだろうか。


姿のない人と、声だけでつながるということがこんなにも不安だなんて、知らなかった。


電話なんて、いつもしている事なのに。


「なんで居ないのさ!」


せっかく会えたのに、その矢先にまた見失うなんてごめんだ。


あたしは人ごみの中をキョロキョロ見渡して、補欠を探した。


「翠」


「何さ!」


「いいから、だまってそこに居ろ。勝手に動くなよ。探すの、けっこうしんどいんだからな」


動くな、その声を聞いた後、電話は一方的に切れてしまった。


「あっ! ……なんだよ、切りやがって。バカヤロー」


チッ、と舌打ちをして顔を上げた時、危うく携帯を落としそうになった。