自分がものすごくちっぽけな存在に思えた。


神秘的な光景を見つめながら少しだけ泣きそうになったのは、孤独を感じたから。


あたしは今、こんなにも広い宇宙の片隅にいるんだ。


こんなにも人が溢れている世界に生まれて、そして、彼に出逢って恋に落ちた。


運命なんて言葉じゃ足りない。


奇跡と言われても、納得なんかできない。


五万と居る人間の中で、なぜかたったひとりの人を好きになった。


偶然でも、運命でも、奇跡でもない。


ただ、出逢った。


夏井響也という、宇宙にたったひとりの人間に。


この広い宇宙の片隅で、彼に恋をした。


神様も仏様も、あたしは信じない。


ただ、この出逢いだけは信じる。


ガラス越しの小さな宇宙を見上げながら、信じたいと思った。


そして、願った。


補欠に会いたい。


「わっ、見て、イルカの目ってきれいなんだね」


隣に居たカップルの彼女が、はしゃぎながら彼氏の腕に絡みついた。


虚しくて、とっさに目を反らした。


なんで、あたしはこんな人ごみの中、たったひとりぼっちでイルカなんかを見てんだろう。


さっきいじけたりしなければ、勝手にはぐれて携帯の電源をオフにしないでいれば。


今、あたしの隣には補欠が居たのかもしれないのに。


虚しくて惨めすぎて、もう携帯に電源を入れることもすっかり忘れていた。