「いっ……たいいい」


大理石でできた固いハンマーでしつこくしつこく叩かれるような、左側頭部の痛み。


違う。


今までとは、何かが、確実に違う。


「ぎ……」


これは自分の声なのかと疑ってしまうような、まるで獣のような咆哮を吐き出して、


「がああああ」


あたしは雪の上をのたうちまわった。


もがけばもがくほど、全てがスローモーションだった。


雪が冷たいのか熱いのか、それすら判別できない。


「いた……い……」


次第に、声が出なくなってくる。


それでも、あたしは雪を巻き上げながらのたうちまわった。


誰か、助けて。


ハンマーが、あたしの頭を容赦なく打ち続ける。


頭が割れる。


助けて。


不意に涙が頬を伝った。


「ちょっと! この子、吉田さんの娘さんだよ! 大丈夫かね!」


近くで雪寄せをしていたおじいさんが、スコップを投げ出して駆け寄って来た。


助けて!


だけど、返事をする事なんてあたしにはできっこなかった。


ただ、激痛に反発して、雪の中でもだえるしかなかった。


近所の人たちが数人集まって来たのは、分かっていた。


それくらい、意識ははっきりしていた。


意識がはっきりしているから、痛みも激しいものだった。


「翠ちゃんでねえか! どうしたのさ!」


「おいおい、誰か、冴子さん呼ばって来い」


「おらあ、呼んで来る!」


だけど、だんだんとその会話が耳から遠のいて行く。