「アキ……ナ……」


翠夏。


アキナ。


本間翠夏(ほんま あきな)。


「なに、それ……」


あたしはドキドキしながら、携帯電話を強く握りしめた。


「最強じゃん! ヤバイよ、その名前! 超ミラクル、ハイパーいい名前!」


涼子先輩が言った。


翠ちゃんと夏井くんがキセキを起こした夏に、私と淳平のところに来てくれた天使だから。


翠、と、夏、で、翠夏(あきな)。


素敵でしょ。


そう言って、涼子先輩は可憐に笑った。


「素敵ってもんじゃないよ、それ! 翠夏」


もう、胸がいっぱいだ。


「最高! エベレストよりも最上級!」


胸がいっぱいで今にも破裂しそうだ。


「じゃあ、承諾してもらえる? 翠ちゃんの一字、もらえる?」


「うん!」


ダメっていうもんか。


いいに決まってんじゃん。


「あったりまえじゃんか! 貰っちゃって、ベイビー!」


キャッホー! 、と雪の上でジャンプするあたしを見て、雪寄せに精を出していた人たちが目を丸くして笑っていた。


「ありがとう、翠ちゃん」


「何言ってんのさ。お礼言うのはこっちだよ、涼子先輩。あんがとね、ほんとにあんがと!」


その時、特に何かがあったわけでもないのに、携帯電話が手から抜け落ちた。


「うわっと」


雪の中に落ちる、携帯電話。


手がじんじんと痺れて、一瞬、感覚がなくなっていた。


「やべっ」


あたしは慌てて携帯を拾って、付着した雪を払った。


何だ……今の。