――性別が判明しました


――やっぱり、母親のカンて当たるのよ、きっと


あたしと補欠はそのメールを見た瞬間どちらからともなく手を繋いで、同時に万歳をした。


――女の子です


嬉しかったし、一日中わくわくが止まらなかった。


命ってすごいと思った。


あたしと補欠はその日、涼子先輩と本間先輩の赤ちゃんの話題で朝から晩まで盛り上がった。


涼子先輩に似て絶対に美人だ、とか、本間先輩に似て芯の通った子だ、とか。


「いよいよかあー! 楽しみだねえ、涼子先輩」


「うん」


「それで、今日はどうしたのかね?」


聞くと、涼子先輩は改まった口調で答えた。


「今日はちょっと、翠ちゃんの承諾を得たいなあと思って」


「承諾、とな?」


「そうなの」


彼女が持ちかけて来たものは、あたしを有頂天にさせるような劇的感激な内容だった。


「実はね、ずっと、淳平と真剣に話し合ってね。まずは、翠ちゃんの許可を頂かないとって事になって」


フフ、と涼子先輩が意味深に笑った。


「ほほう……どんな事かね?」


少し緊張しながら聞くと、コホンと咳払いをして彼女は言った。


「生まれて来る子の名前の事なんだけど、翠ちゃんの“翠”貰えないかなと思って」


「え……あたしの?」


翠を……?


「うん。あのね、翠という字に“夏”って書くの」


「ふ……ふむ」


牡丹雪に打たれながら、とりあえず素直に読んでみる。


「翠、に、夏……ミドリナツー? なんじゃそらー! やめやめえーい!」


ダッセーよ! 、と前髪をかすりながら落ちる雪片を指先で払って、笑い飛ばした。


「ちょっと! 翠ちゃん!」


すると、ちょっとムッとした声が返ってきた。


「自分の名前の読み方くらい勉強したら?」


「なにをー! 知っとるわい。スイ、だろ! スイ」


「もういっこあるのよ」


アキラ。


「翠をアキ。夏のナ、を付けてみて」