純白の花が舞い降りる中を、あたしは颯爽と歩き出した。


近所中に雪寄せをしてる人がいて、道路に積もった雪を除雪車が豪快にはだけて行った。


歩くたびに足元で降り積もった雪がぎゅっぎゅっと小さな音で鳴いた。


雪はやむ気配がない。


次第に強くなる一方だ。


今日は本当に大雪になるのかもしれない。


早く補欠のところに行こうと速度を上げた時、バッグの中から着うたが漏れ出した。


立ち止まり、携帯電話を取り出す。


「おお、珍しや」


それは、涼子先輩からの電話だった。


久しぶりの連絡が嬉しくて、あたしは急いで通話ボタンを押した。


「ハローハロー、こちら翠! ご無沙汰、涼子先輩」


電話の向こうから、清楚な笑い声が聞こえた。


「ハローハロー、翠ちゃん。元気にしてる?」


当たり前じゃんか。


「ミラクルハイパー元気! 涼子先輩は?」


しきりに振り続ける牡丹雪。


その雪片がまつ毛に引っかかる。


雪の結晶をぱさぱさ払って、あたしは空を見上げた。


「本間先輩と仲良くやってる?」


灰色の雪空から淡い光が漏れて、地上を細かく輝かせていた。


「うん。私も淳平も元気だよ。もうお腹もだいぶ大きくなって、ちょっとしんどいけどね」


「ああ、そっかあ! 来月だっけね。生まれるの」


「うん。もうすぐ臨月なの」


涼子先輩のお腹の中で、赤ちゃんはすくすくと順調に育っている。


出産の予定は来月、三月だ。


赤ちゃんの性別が判明したのは、去年の秋の終わり。


山の頂上が白い帽子をかぶり、いよいよ初雪がこの町に降りそうな朝霜が覆った、寒い寒い日だった。