「あたし、翠の事、まじで大好きだから。いや、冗談抜きでな」


「は? なんじゃ、急に」


心がくすぐったくて仕方なかった。


「あの終業式の日の事がなかったら、あたし、人生の道踏み外してたかもしれんよ」


「なっ……やめとくれよ。踏み外さんでくれ」


急に、明里と結衣に会いたくなった。


二月に入って、あたしたち三年生は進学と就職活動の関係で、登校日以外は自由登校だ。


だから、明里と結衣と会ったのはもう10日も前の事だ。


「とにかく、あたし、翠と結衣にはほんっとに感謝してんだ」


それは伝えときたくてさ、と明里が照れくさそうに言った。


「そうかね」


嬉しかった。


「あっ、そうだ! 結衣、今日の夜に帰って来るんだってさ」


ぱあっ、と花開いたように明里が言った。


「翠にもメール来てるだろ?」


「ああ、昨日の夜にな」


結衣は進学せず、この春から地元のショップでアパレル店員になる。


だから、ここ一週間ほど仙台の本社に研修に行っているのだ。


お洒落な結衣がその道に進むと言い出した時、やっぱりな、と素直に納得した。


結衣の服のコーディネートのセンスは三人の中でも群を抜いているし、最強だった。


「だからさ、花菜つんも誘って、明日4人で会わない?」


明里の提案に、ふたつ返事で頷いた。


電話を切る前に、明日顔を見て言うのは恥ずかしいから、と明里が言った。


「あたし、夏井よりいい男見つけてやるかんな」


「なにー! 生意気な女だ! 補欠よりいい男なんかいねえやい!」


「いるし!」


「いねえ!」


「いるって!」


「いねえって言ってんだろ!」