「好きなんだろ? それは嘘じゃないんだろ? なら、いいじゃねえか。後悔しても、その気持ちが本物ならいいじゃねえか」


好きなんだろ? 、もう一度補欠が聞いた。


「……うん」


明里が頷いたのを確認した補欠が、男に言った。


「……だ、そうです。あなたは、このままでいいんですか?」


補欠を、すごいと思った。


あたしは力ずくでどうにかしようと必死になるばかりだったのに、補欠は物静かな雰囲気で男の心を変えてしまったのだ。


男はぐっと何かを堪えたあと、明里の手を握り返して言った。


「明里……ごめん」


「え……うん……」


明里は、泣いていた。


胸がいっぱいのあたしと、結衣と補欠に、


「ありがとね」


そう言って、明里は彼氏と寄り添いながら雪の中へ消えて行った。


その日から、明里の彼氏は人が変わったように真面目になったらしい。


浮気もなくなり、バイトも始めて、明里を大切にするようになったらしい。


でも、もう、遅かったのかもしれない。


あの日から、明里の中で確実に何かが変わったのだ。


年明け早々、明里は掛け持ちしていたバイトを全てすっぱりと辞めた。


それからは何かに憑りつかれたように受験勉強の鬼になった。











「翠? 聞いてんのかよ!」


明里の声が耳を突き抜けて、ハッと我に返った。


「ああ、うん! 聞いとりますがな」


「嘘つけえ! 聞いてなかったくせに!」


ガハハと豪快に笑ったあと、明里が続けた。