その理由が明確になった今、あたしの堪忍袋は見事に世紀の大爆発を起こしてしまったのだ。


「お前、明里の彼氏だろうが! 何やってんだよ! 何……やって……」


なんで、明里の健気さに気づいてくれないのか。


こいつは明里の何を見ているのか、と悔しくてたまらなかった。


下校して行く生徒たちが好奇の目を向ける中、あたしは馬乗りになって泣きながら男をポカスカ殴り続けた。


こいつは、明里の事を何も分かっていない。


こんな男に、明里を守れるわけがない。


「もっと、ちゃんと明里の事見てよ! 最強にいい女じゃん! お前にはもったいねえよ! くそったれ!」


男の目が暗く陰っていた。


「おいおい、何やってんだよ」


その時、あたしの腕をぐいっと引っ張って立たせたのは、雪まみれの補欠だった。


「どうした、翠?」


「ほけつう……あたし、悔しくってさあ!」


「いや、つうか……」


こいつ、誰? 、そう聞いて来た補欠の腕を引っ張って、


「悪い、夏井」


答えたのは泣きっ面の明里だった。


「あたしの彼氏。最低な彼氏」


補欠は首からマフラーを外してあたしの首にぐるぐる巻き付けながら、明里に微笑む。


「明里、男いたんだ。知らなかったよ」


「うん。夏井みたいにいい男じゃないけどね。こんなしょうもない男だけど、一応、彼氏」


そう言って、明里は彼に手を差し伸べて立たせた。


明里の彼氏は、終始うつむいていた。


「だけど、なんでかどうしてもスキなんだよね」


自分でもよく分からん、そういって溜息を落とした明里に補欠は言った。


「好きならいいじゃん。頑張れよ」


「え……」


明里は豆鉄砲をくらったような顔で補欠を見ていた。