「いつまでもさ、グダグダした関係続けてんのもダリーなって。短大も合格したし、心機一転、ってやつう?」


確かに、と思う。


実を言うと、明里はずっと、年上の彼氏に悩まされ続けて来た。


何度も浮気の現場に遭遇し、その度に土下座されては渋々許し続けて来た。


明里が、その男に、心底惚れてしまっていたからだ。


そんな明里の気持ちを知って利用してなのか、あやつはひたすら明里を泣かせ続けて来た。


あたしと結衣が何度別れろと言っても、明里は別れなかった。


こんなに男勝りな性格なのに、絶対に別れようとしなかった。


でも、明里の気持ちが変わった経緯には短大の合格はもちろん、あの日の出来事が絡んでいるのだろう。


二学期の終業式の事だ。


式が終わって下校する時、正門前で明里をイケメン彼氏が待ち伏せしていた。


結局ラブラブなんじゃん、なんて冷やかした矢先あやつが発した一言に、あたしと結衣は顔面蒼白になった。


「悪いんだけど、2万くらい貸してくれない?」


言葉がでなかった。


大学生のくせに、高校生の彼女にわざわざ金をせびりに来るだろうか。


「バイト代、出ただろ?」


へらへら笑って、友人がいる前で、自分の彼女に恥をかかせたりするだろうか。


「こんなとこでやめてよ!」


慌てて彼氏を引っ張って逃げようとする明里を、あたしと結衣が捕まえて男からはぎ取った。


「もう……やってらんねえよ」


悔しそうに唇を噛んだ明里は、恥ずかしそうに涙目でうつむいていた。


「明里っ」


あたしは、明里の胸ぐらを掴んで睨んだ。


「お前、ずっとこんな事してたのか?」


明里はうつむいたまま、顔を上げようとしなかった。


「男に金渡してたのかって、聞いてんだよ!」


あたしのでっかい声に細い体をビクつかせ、明里が小さく小さくうなずいた。


「こんの……バカたれが……」


別に正義の味方とか、そういうつもりじゃかったけど。


カッとなった。