その幸せを味わいすぎて、感覚が狂ってたんだと思う。


あたしはただ……今を大切にしたかっただけなのに。


やっぱり、神様は残酷なやつだ……。












その日は、朝から朗報のラッシュだった。


朝一番に届いたのは、あっこからのメールだった。


春になったら北海道を出て、あたしたちが住む県の大学に進学する事が決まったという知らせだった。


健吾は社会人野球に入団が決まって、地元の会社の内定も決まっていた。


やっと健吾くんの側に行ける、とあっこはメールにたくさんのハートの絵文字を入れていた。


朝食を終えた後すぐに電話があった。


「短大、合格した!」


明里からだった。


「やっべえよ! 春から、花の女子大生だぜー!」


「やったじゃんかあ! さっすが明里! おめっとさーん」


明里は美容系の専門学校を志望していたのに、秋になって突然、進路を変更した。


保育士。


あたしの家に遊びに来る機会が増え、茜と蒼太と関わるうちに、明里の中で何か特別な感情と目標が芽生えたらしい。


「あたしさ、カリスマ保育士になっかんね! 子供、超めんこいしさあ! あたし、まじで頑張るし!」


「じゃあさあ、まず、その口のわりーとこ直さなきゃな。明里は」


うっ、と言葉を詰まらせた明里は、


「それは翠だって同じじゃんかよ」


とすぐに鼻でフンと笑った。


「それと、もういっこ。あたし、彼氏と別れたから。さっき、一分くらい前に」


「え! まじ?」


「うん、まじ」


明里は落ち込んだ様子はなく、逆に清々しい声で続けた。