お見事に、真っ暗。


これから何日もこんな夜を過ごして、朝を迎えて、また夜を待たなきゃならんのか。


「やっとれんわ」


不意に、重い溜息が漏れていた。


どっこいしょ、とあたしはベッドを抜け出した。


全然眠くないし、かと言ってやる事もない。


家に居れば、茜や蒼太と飯を食って、風呂にいれて、寝かしつけて。


少し勉強したくらいにして、補欠にイタ電したり、結衣や明里とくだらないメールを送り合ったり。


ネイルをしたり、お笑い番組を観たり。


時間はいくらあっても足りなくて。


一日が48時間くらいあったらいいのにって思うくらい、時間が足りないのに。


不思議なものだ。


今は、時間を持て余していて、誰かにくれてやりたいほどだ。


こんなに時間を長く感じたのは、生まれて初めてかもしれない。


「暇でござんす」


特に何というわけじゃなかった。


無意味にカーテンを開けようと手を伸ばした時。


「……お……なんじゃ」


カーテンの向こうで、蝋燭の明りのような優しい光がぽわと膨らんだ。


そして、すぐに消えた。


ぽわ、と膨らむように光る。


ふう、としぼむように消える。


小さな小さな、淡くて儚げな光が膨らんではしぼむ。


一体、何の光だ。


第一、ここは8階という高さで。


まさか、天界からの使いの者が、あたしをお迎えに参られたのか?


「いやいやあ」


お迎えだとしても、さすがに早過ぎるだろう。


まだ、手術も受けていないのに。


確かに、今日倒れたのは事実だし、しかし、死に至るほどの病ではないわけで。