「花菜ちん! 来てくれたのか!」


「当たり前じゃん! もうっ……心配したんだから……もうっ」


ほんとにもう! 、と花菜ちんはハアハア息を切らしながら、あたしたちが正座する狭い狭いベッドに飛び乗って輪に加わった。


なんてこったい。


野球部のマネージャーまで、あたしのとこに駆けつけてくれるとは。


あたしは、なんと贅沢な17歳なのか。


涙が止まらん。


あたしたちは狭いベッドにキツキツにおさまり正座しながら手をつなぎ合っていた。


4人の泣き声、笑い声。


それは、消灯時間の21時ギリギリまで病室に響いた。


あたし、結衣、明里、そして、花菜ちん。


一見、とんちんかんな組み合わせの友情が、ルービックキューブのようにカチリと成立した、優しい雨の夜だった。


あたしたち4人の友情は、確かなものになった。


「もう暗いから、あたしがお嬢たちを送ってやろうじゃないの」


ということで、母が車で3人を送って行った。


母と3人がいなくなったとたんに、病室がただっ広い焼野原のように思えた。


どこもかしこも、スカスカした。


さっきまでキツキツだったベッドが、うるさいくらい賑やかだった空間が無駄に広く感じて、あたしは急いで鞄から携帯電話を取り出して握りしめた。


正直、寂しかった。


ひとりじゃないことは十分分かっているけれど、やっぱり、みんなが帰ると寂しくて心細い。


どうしよう。


補欠にメールでも送ろうかなと思った時、病室に夜勤の看護師さんが入って来た。


「消灯時間過ぎてますよー。電気、消しますね」


「了解、了解」


あたしは携帯電話を握りしめたまま一気に毛布の中にもぐり込んだ。


カチッ、とスイッチが切られる音がして、ナースシューズが廊下を摩擦する音が遠ざかって行った。


「……ぶはっ」


毛布から顔を出すと、室内は暗闇と化していて、異次元空間のように静寂に包まれていた。