う、と言葉を飲んだあたしを見て、ふたりは肩をすくめてクスクス笑った。


よく、ご存じで。


さすが、結衣に明里だよなと思った。


「ま、そんなとこだろうなとは思ってたけどな」


なあ、結衣、と明里が振ると、


「ああ。みずくせえよ、まじで。うちらの友情は、んな甘っちょろいもんじゃねえだろ」


結衣が得意げにニヤついた。


「しんどい時は言えよ。つうか、頼れよ、うちらに」


「ああ。翠のためなら、何だってしてやるよ」


なんだかもう胸がいっぱいで、顔を上げる事ができなかった。


いつもみたいに笑ってふざけることなんかできなかった。


こんな意地っ張りで強情でわがままなあたしに、頼って来いと、お前のためなら何だってしてやると、言ってくれる親友たちがいる。


それだけで、どんなに心強いか。


この時、あたしが、このふたりにどんなに救われたか。


「すまんな、ふたりとも。ごめんな」


謝りながらふたりの手を握ると、あとは勝手に涙があふれる一方だった。


先に、結衣が言った。


「ちゃっちゃと治して、退院しろよ。翠が居ない学校なんかつまんねえよ」


「分かってらい」


「それに、夏井っていう、彼女命のどあほうが待ってるかんな」


えっ、と顔を上げると、明里が手のひらであたしの涙をぐいっと拭きとった。


「連れてってもらうんだべ? 夏井に。甲子園に連れてってもらうんだろ?」


泣いてる暇があったら早く治しやがれ、明里が言うと、ふたりは豪快に笑って、あたしの肩をバシバシ叩いた。


嬉しかった。


というより、俄然やる気になった。


あたしは今日まで、何にそんなに恐れ、ビクビクしてたんだ。


急にばかばかしくなった。


あたしのためにこうして泣きながら駆けつけてくれるふたりの親友がいるじゃないか。


それに、何よりも夢中になっている野球よりあたしを優先してくれた彼氏と、その親友がいるじゃないか。


その時だった。


「翠ちゃん!」


もうじき消灯時間だってのに、病室に駆けこんで来たのは汗だくの花菜ちんだった。