こんなあたしにためにバカみたいに泣いて、駆けつけて来て、全力で抱きしめてくれるような親友が、ふたりもいるのだ。


「なんで翠が病気になるんだよ! 代わってやるよ! うつせ、あたしに」


こいつは、明里は脳腫瘍という病気の意味を分かってんのか、ないのか。


「はあ? なにバカなこと言ってんだよ」


「あたしが代わってやるよ!」


明里が泣いていた。


代わってやりたい、そんな気休めみたいな同情なんかじゃなくて。


代わってやるからうつせ、と言い切るような子が親友なのだ。


あたしは、今最も贅沢な17歳なんじゃないかと思って、泣けるったらなかった。


3人、抱き合いながら、おんおん泣いた。


やっぱり、ふたりの事がたまらなく大好きだという事に気づいた。


このふたりが親友だということが、なによりの誇りであり、あたしの自慢だ。


ほとぼり冷めたころ、外はもう暗くなっていた。


3人でベッドの上に正座をし輪になって鼻水をすする。


ズビビー、ブビー、スンスン。


鼻をかむ豪快な音が、三重奏になって病室に響いた瞬間のその間抜けさ。


きったねー、なんて、あたしたちは同時に爆笑した。


色気ねえなあ、なんて。


「な、翠」


明里が泣き腫らした目をして、あたしの左腕を、


「ごめんな。うちら、気づいてやれなくて」


結衣が腫れぼったい目をパチパチさせて、あたしの右腕を掴んで、ふたりは同時に微笑んだ。


「しんどかっただろ」


「苦しかったよな」


「……え」


不覚にも、きょどってしまった。


「うちらにも言えないくらい、ひとりで抱え込んでさ。そういうキャラじゃねえくせに。柄にもねえよ」


みずくっさい、くっさいくっさーい女だ、と結衣が鼻をつまんでしかめっ面をした。


すると、明里も「クサッ」と鼻をつまみながら言った。


「どうせ、あれだろ?」


「は?」


「うちらに話したら、夏井にもバラされると思って言えなかったんだべ?」