あたしは小首をかしげて、冗談交じりに笑った。


「それ、黒魔術がかかってるから気を付けな。呪われるぞ」


気をつけろ。


強烈な魔術だから。


補欠がエースになれるように、甲子園に行けるように、日々、一羽ずつに祈りを込めて折って来た物だから。


フフ、補欠は笑って、手のひらに乗るそれを見つめた。


「いいんだ」


見た事もないような、優しくてやわらかーい、瞳だった。















夕方近くになって現れたのは、結衣と明里だった。


「みーどりいー……」


「みど……」


ベッドでうとうとしていたあたしは、ふたりを見た瞬間、ぎょっとした。


ふたりはぎっちりと手をつないで、わんわん泣き叫びながら病室に入って来た。


「な……んだ、お前ら。どうした……」


ぎょっとしながら飛び起きると、結衣と明里はますます泣き叫んだ。


まるで、大きなショッピングモールで迷子になってしまった双子姉妹のように。


「どーしたもこーしたもねえよ!」


結衣が、


「何で言ってくんなかったんだよー!」


明里が、いのししのように突進してきて、ベッドに飛び乗り、同時にあたしを抱きしめた。


わんわん泣き叫ぶふたりからは、瑞々しい雨の匂いがした。


「うちら、今世紀最強の大親友だろ! 隠すとか、みずくせえじゃん!」


なあ! 、と結衣が声を震わせた。


「すまん……ごめん……」


あたしはなんて幸せ者で、なんて贅沢者なんだ。