床が天井になって、天井が床になって。


ぐるぐる、回る。


「おい! 翠?」


後ろから明里が、あたしの背中をトンと押した瞬間に、


「う……」


強烈な吐き気が上がって来て。


何だ……あの、光。


最後に見たのは、まるでご来光のような、強烈な白く発光する丸い光だった。













「……んあ」


目を開けた時、そこは全く覚えのない場所だった。


うまそうなカスタード色の天井。


固そうなバニラ色のカーテン。


カーテンから目を背けるようにして瞬きをした時、視界に入って来たのは、悲しい色の雨空だった。


もう、吐き気はすっかりなくなっていて、眩暈もなくて、見事にすっきりしていた。


妙に頭が冴えているわりに、一向に事の事態を把握できないのはなんでだろう。


一体、ここはどこなのか。


なんで、こんなだっさい衣を身にまとい、固いベッドに横になっているのか。


いまいち、分からない。


その時、ベッドをぐるりと囲むカーテンが開いて、ぎこちない笑顔の母を見た直後、


「よう、翠。お目覚めか」


一気に事の事態を把握した。


「娘よ、ついにやらかしちまったな」


と、母が苦い苦い顔で笑った。


「こうなったからには、もう隠しきれんぞ。もう、みーんなにバレたぞ」


返す言葉なんてなくて、悔しくてたまらないのに認めるしかなくて、頷くしかなかった。


「フン、そうかい」


ああ。


何て事を、何つう時期に、あたしはやらかしてしまったんだ。


一番、最悪の打ち明け方を、補欠にしてしまったんだな。


「で。ここまで、どうやって運ばれて来たんだ? あたしは」


聞くと、母は華奢な肩をすくめて、都合悪そうに答えた。


「最悪さ。よりによって、救急車だ」


だろうな、と予感はしていた。


「そっか」


それしかないよな。