「ほんと、好きなんすねえ。翠さんのこと。野球並に、それ以上なんじゃないっすか?」


補欠を見ると、耳まで赤くなっていた。


「まあ……うん」


補欠の背中を見つめながら、あたしはほっとしていた。


今日まで、一度も口に出さなくて本当に良かったと思った。


その質問を、何度しようかと思い悩んだことか。


あたしと野球、どっちが大切?


でも、結局、その答えが怖くて聞けなかっただけだけど。


そんなくだらないことを聞くような真似をしなくて本当に良かったと思った。


同時に、やっぱり言おうと決心がついた。


おれには支えることも、今まで通り付き合うこともできない、と言われてしまったとしても。


それでも、病気のことを打ち明けよう、と決心がついた。


跳ねっ返りでわがままで、ひねくれ者のあたしを、大切だと思ってくれるこのひとにだけは。


それなのに……。


「もういいだろ、勇気。今、大事な話すんだから」


ほら、帰れよ、と補欠が追い払う仕草をすると、


「ああ、そうですよね! そうだそうだ!」


勇気が目を輝かせた。


「大事ですもんね。翠さんに言わないわけにはいかないっすよね」


「何、何かあったのか?」


おい、と補欠のワイシャツを引っ張ると、答えたのは希望に満ちあふれた目の勇気だった。


「実は、明日、発表なんすよ」


ね、と勇気が補欠に微笑む。


少し間があって、ああ、と何かを思い出したように補欠が頷いた。


「何、何だよ」


あたしはふたりの顔を交互に見て、


「何の発表?」


小首をかしげた。