勇気は、補欠と健吾の出身中学校からの後輩で、ふたりを追いかけて南高に入って来たのだ。


健吾と変わらないすらりとした長身で、一年生にしてはどこか大人びたキリリとした顔立ち。


でも、ひとたび笑うと、マメシバのようにかわいらしい。


勇気は初対面の時からひとなつこくて、なぜかあたしによくなついていた。


「よ、勇気。お疲れさーん」


声を掛けると、勇気はハアハア息を切らしながら駆け寄って来た。


「翠さん、翠さん、翠さーん!」


わんこみたいだ。


「うーん」


あたしを足元から舐めるように見上げる勇気の背中で、スポーツバッグが陽射しを反射させていた。


「ビーサンにショーパン、真っ白なTシャツに、金髪!」


「は?」


「今日はいちだんと、かあーわいいっすねえー!」


日に焼けた小麦色の笑顔に、真っ白な歯がこぼれていた。


「翠さんはどんな服装でも可愛いっす!」


「えっ、そうか? 勇気は正直者だな!」


よしよし、と坊主頭をわしゃわしゃ撫で回すと、


「調子のんなよ、勇気」


と補欠がムッとした顔で、あたしの腕を引っ張った。


「のってねえわい! 勇気は正直な気持ちを口にしたまでだ」


なっ、と見ると、勇気は「おす」と真面目に頷いた。


「まじかわいいっす!」


ニッと笑った勇気は、さりげなく二枚目で、けっこうモテるらしい。


風のうわさだけど。


入学してまだ数か月だっていうのに、すでに5人ほどの女子から告白されたらしい。


が、しかし。


どうも、ことごとく断っているらしいのだ。


理由はひとつだった。