いやいや、真剣かつ神妙な面持ちで打ち明けた方がいいだろうか。


どうしよう、補欠。


あたし、病気なんだ。


手術しなきゃいけなくて、不安で……なんて。


ベンチに木陰を作る大きな木から、ひぐらしの鳴き声が降り注いでいた。


あたしは水滴だらけのペットボトルを両手でギュッと握りしめた。


なんで言えないんだ。


言葉を口にする事がこんなに難しいなんて。


どうしても打ち明ける事ができない。


言葉が喉につっかえて、出て来ない。


何よりも怖いのは、補欠の反応だ。


知った時、補欠はどんな顔をして、どんな反応を示して、一言目に何を言うのだろう。


笑い飛ばして、お前なら大丈夫だろー、なんて。


軽く流してくれたら、どれだけ気が楽だろう。


でも、なんとなく分かるものだ。


おそらく、補欠は固まってしまうだろう。


あたしはそれが、何よりも怖い。


「何だよ。そんなに言いにくいことか?」


補欠がスポーツドリンクにキャップをして、きゅっとしめた。


熱風に近い暑い西風が、公園を吹き抜けて行った。


「言ってみろ」


「あ……と」


「いいから、言えって。おれ、ちょっとやそっとじゃおどろかねえぞ」


「……言い切れんのか?」


病気だと知っても驚かないって、言い切れるのか?


プ、と吹き出して、補欠は言った。