「うわっ、女のくせにゲップなんかすんなよ」


補欠はスポーツバッグのジッパーを閉めながら、くははと笑った。


「があー。うまー。ペプシ最高ー」


左手にペットボトルを握りしめ、腰に手を当てる。


「風呂上りのおっさんかよ」


「ええい、なんとでも言え! あー、うまいうまい!」


「そりゃ、良かった」


今度はてれくさそうに笑って、補欠はまたワイシャツをばたつかせた。


補欠は汗だくだった。


おそらく、キツイキツイ練習のあと、即行で着替えて、近くのコンビニでペプシを購入し、わき目も振らず、あたしのとこに来てくれたに違いない。


汗だくになるくらい、必死になって。


この猛暑の中、朝からずっと練習で疲れ切っているはずなのに。


それでも補欠は、文句ひとつこぼさない。


練習で疲れた、なんて言葉、補欠の口から聞いた事がない。


それに比べて、あたしはなんだ。


文句ばっかで、わがままばかり言って。


勝手にストレスためこんで……バカにもほどがある。


今のあたしは、補欠の彼女でいる資格なんてない。


手術しなきゃならなくなったのに、こんなふうにいつまでも逃げてらんないよな。


補欠が、スポーツ飲料をぐいっと飲む。


その隣で、あたしはボトルのキャップをぎゅぎゅっときつく閉めた。


よし。


もう、いつまでも隠すような真似してらんないよな。


今がタイムリミットなんじゃないだろうか。


このまま隠し通すことは、できないんだと思う。