「はあ? 抱きついてきたのは翠だろ!」


「うっせえなあ。彼女なんだからいいじゃん」


文句言うな、あたしがつっぱねると、補欠はフフンと鼻を鳴らして、肩からスポーツバッグを下ろした。


「なにい。生意気言いやがって」


そして、しゃがみ込む。


「そんな態度とっていいと思ってんのか?」


ニッと白い歯をこぼれさせて、スポーツバッグのジッパーを一気に開いた。


「いいもん買って来てやった彼氏に、そんな態度とったら、バチがあたるぞ」


「なにー! いいもんてなんだ」


スポーツバッグの中を覗き見ると、補欠はワイシャツの胸もとをパタパタ扇ぎながら、それを引っ張り出した。


「ほら、飲め飲め」


「おおー! いいの? くれんの?」


目を光らせたあたしに、


「うん。この炎天下の下で待っててくれたんだろ」


こんな物で悪いな、そう言って、キンキンに冷えたペプシコーラのペットボトルを突きだして笑った。


補欠は、あたしの事を良く知ってる人間なんだと思う。


炭酸飲料の中でも、一番大好きなペプシコーラ。


「あんがと! 補欠!」


ペプシコーラを受け取るとやっぱりキンキンに冷たくて、水滴がぽつぽつと地面に斑点を作った。


補欠はいつも何食わぬ顔をしていて、無表情だけど。


でも、あたしのことを良く分かってくれてるんじゃないかと思う。


キャップを時計回りに回すと、プシュウと一気に炭酸ガスが抜けて、少し甘い香りがさわやかに香った。


一口飲むと、喉からすうっと炭酸ガスが入って来て、火照った体を一気にさまし、浄化していった。


「プハーッ……ゲーフッ!」


ゲップをかますと、鼻からツーンとガスが抜けていった。