こんな子供じみた行動ばかりのあたしを、正面から真っ直ぐ見てくれた先輩は、涼子さんだけだったから。


悔しいけど、大っ嫌いがいつの間にか憧れに変わっていた。


「嫌いって言って、ごめんね」


いつも生意気な態度ばかりとって、ごめんね。


先輩。


「本当は嫌いじゃないよ」


「うん……うん、ありがとう」


「先輩」


あたしは涼子さんから離れて、ドンと花束を押し付けた。


「これ、あたしの気持ち!」


「私に? くれるの……?」


清楚な顔をぐにゃぐにゃにゆがませ、花束を抱き締めて、涼子さんはポロポロ涙を溢れさせた。


数種類の花に埋もれる彼女はやっぱり美人で。


グリム童話に出てくるお姫様みたいだ。


「信じられない……私、てっきり」


補欠を譲る事はどうしてもできないけど。


命に代えても、無理だけど。


「翠ちゃんに相当嫌われてると……思ってたから……」


「まじで嫌いなやつに花贈るバカがいるか!」


「やだ……死ぬほど嬉しい……」


かつての戦友に、こんなことを頼むのは酷かもしれないけれど。


「先輩。あたしの最後のわがまま聞いてくれる?」


だけど。


「卒業しても、夏井響也のこと、応援してくれる?」