探したよ、と水色の蝶ネクタイの女子生徒がひょっこり現れた。


「あ、ごめん。帰ろ帰ろ」


振り向いてにっこり微笑んだ涼子さんとあたしを見て、その人は声を失ったようにそこに突っ立った。


「じゃあ、私もう行くね。バイバイ、翠ちゃん」


にっこり微笑むと、涼子さんはあたしの手にハンカチを握らせて、友人の元へ駆け出した。


「えっ! ちょっと、これ」


あたしはハンカチを突き出して、涼子さんを呼び止めた。


涼子さんが振り向いて、立ち止まる。


「翠ちゃんにあげる!」


涼子さんの友人があたしを見て、怪訝な顔付きをしていた。


「でも!」


こんな綺麗なハンカチ、もらえん。

淡い淡い、桃色、いや、可憐で清楚な桜色のハンカチ。


「それ、私の一番のお気に入りなの。貰って」


「だったらなおさら……」


言いかけたあたしの言葉を、涼子さんの清楚な笑顔が抑えつけた。


「戦友の証よ、それ!」


「せん……」


戦友?


「じゃあね、翠ちゃん」


あたしは涼子さんの声を聞きながらハンカチをギュッと握って、見つめ続けた。