だから、補欠の彼女になってからも、彼女と目があうたびにあっかんべーをして、あたしは生意気な態度ばかりとっていたのに。


それなのに、なんで涼子さんは平気であたしに優しくできるんだ。


好きだったんだろ。


補欠のこと。


その補欠の彼女に、なんで優しくできるんだ。


あたしだったら、絶対できないけど。


逆に意地悪してしまうかもしれないのに。


なんで……あたし寂しいと思ってんだろう。


そっぽを向いて生意気な態度をとるあたしに、涼子さんがぽつりとこぼした。


「あと、1ヶ月なんだよね」


「え?」


見ると、涼子さんは優しい目つきをして、あたしの髪の毛にハンカチを押し当てていた。


「この制服も、この学校も。翠ちゃんと会えるのも」


そうか。


涼子さんはもう卒業してしまうのか。


だから、あたし、寂しいのか。


大嫌いで邪魔でしょうがなかった人の卒業。


せいせいしてもいいはずなのに。


なんでこんなに寂しいんだろう。


なんで、こんな生意気で跳ねっ返りのあたしに、涼子さんは優しいんだろう。


その時、


「あ、居た! 帰ろー、涼子」