「にっ……ニャーオ!」


なあんだ、猫か。


なんて、そんなオチになるわけもなく。


「誰?」


涼子さんが大きな声を出した。


ちっ。


バレたらしょうがねえ。


あたしは潔く立ち上がり、焼却炉の陰から飛び出した。


「ソーリー! 全部聞いてしまった!」


「えっ! 翠ちゃん?」


「あ……夏井の」


ふたりがぎょっとして、粉雪まみれのあたしを見つめた。


「いかにも。吉田翠です。いや、盗み聞きする気は全くなかったんだけど。聞かざるをえなかなったのだ」


あたしはゴミ箱を小脇に抱えて、もう一度謝った。


「すまん」


頭を下げる。


「この事は絶対誰にも言わない! てか、あたし、何も聞いとらん。ゴミ捨てに来たしがないただの通りすがりのもんでして」


ハハハと笑いながら足元に積もった粉雪をバッサバサかき分けて、


「これにておさらば!」


あたしはその場から走り去った。


まるで、逃げるように。


裏口から校舎に飛び込んだ時、あたしに降り積もっていた粉雪がサラサラ落ちて床を濡らした。


「いやはや……まいった」


あたしは壁に背中を付けて、ズリズリとそこにしゃがみこんだ。