あっこは照れ屋だ、それくらいにしか思っていなかった。


あっこが見せた微笑みの下に、切ない現実があったなんて。


知らなかった。


「いいから、いいから。この翠様にまかしときな」


そして、このあと、何も知らないあたしがしでかした余計な協力が、大人しいあっこを爆発させてしまったのだ。


今、もうひとつの恋が一気に加速しようとしていることに、あたしは気づくよしもなかった。


南高の文化祭は2日間にわたって開催された。


初日は一般も招き、盛大に。


そして、今日、2日目は南高生のみの参加で。


全ての日程が終わったのは14時で、それから全校いっせいに後片付けが始まった。


「うおー。すげえもったいねえ!」


「壊したくねえよな」


何日もかけて、みんなで作った手作り屋台を少しずつ解体していく、男子たち。


「あっという間の2日間だったよね」


「楽しかったよねー」


「また来年かあ。長いなあ」


寂しそうに話しながらダンボールに物を詰めていく、女子たち。


現場監督のにべちゃんが言った。


「夏井、岩渕。それ、とりあえず教材室に保管しとくから、運んでおいてくれ」