「うらやましいな」


ポロリとこぼしたあっこは、ほろ苦いコーヒーを飲んだ後のように笑った。


長い睫毛に、くっきり幅広い二重まぶた。


大きな黒目に、キュートなおちょぼ口。


あっこは笑っている。


それなのに、あたしは不思議な気持ちになった。


あっこの横顔は少し寂しそうで悲しげで、言葉ではうまく説明できないような影を感じた。


「あっこ」


あたしはあっこの耳にこっそり囁いた。


「早いとこ捕まえとかないと、誰かに持ってかれるぞ。健吾」


「……えっ」


大きな目をビー玉みたいに丸くして、あっこは耳まで真っ赤になってうつむいた。


ほう。


やっぱり図星だったか。


「協力してやろうか」


ニッと笑ったあたしに、あっこは小さく苦笑いして首をふるふる振った。


「大丈夫」


「何だよ、照れんなよ!」


肘で小突くと、あっこはフフと笑った。


とても、困ったように眉間にシワを寄せて。


この時のあたしは完全に浮かれていて、何も分かってやれていなかった。


「あっこは謙虚な女だな」


「違うよ。そんなんじゃないの」


そんな照れなくてもいいじゃんか。