「夏井ー、いつから好きだったんだ? 言えよ」


「……」


「てか、翠のどこに惹かれたんだよ。答えろ。響也」


「……」


両サイドからど突かれているのに抵抗も反撃もせず、淡々と突き進む補欠の背中。


「確かに」


今すぐ、その背中に抱き付きたいと思った。


やっぱり、好きだと思った。


諦めたり、途中で投げ出すようなこと、しなくて良かった。


そう思った。


じゃれ合う補欠たちの向こう先に、どこまでも、青空が広がっていた。













噂が広まるスピードは特急列車並に、超マッハだった。


教室に入るや否や、クラス中が祝福ムードであたしと補欠を迎え入れた。


噂をたらし込んだのはあたしの予想通り、結衣と明里だった。


「まじで恥ずかしいんだけど」


補欠は口を尖らせて椅子に座るなり、ぷいっと窓の外に視線を飛ばした。


補欠の後ろに座り、頬杖をついて、あたしも窓の外を眺めた。


二羽のトンビが平行線を描いて、青空を優雅に飛んでいた。


青い空。


白い雲。


秋の風。


あたしは補欠の椅子の脚をガツンと蹴っ飛ばした。