ね、響也、と花菜ちんが補欠を小突く。


「……」


「相変わらず、無愛想」


「……」


補欠は照れくさくてたまらなかったんだと思う。


周りの反応に背を向けてスポーツバッグを背負い直し、補欠が校舎に向かってすたすたと歩いて行く。


「待てよ、夏井」


右から岸野くんが、


「昨日、突然学校に乗り込んでったからさ、気になって気になって」


「おれはまだ認めたわけじゃないからな」


左から健吾が、同時に補欠のわき腹をど突いた。


「あっ!」


あいつら、許せん!


例え花菜ちんの彼氏であろうとも、許さん。


補欠のことイジメやがって。


「コラ、お前ら」


追い掛けてようと構えたあたしの腕を、花菜ちんが捕らえる。


「ねっ」


振り向くと花菜ちんがにこにこしていた。


花菜ちんの笑顔は爽快だ。


「だから言ったでしょ」


「何が?」


「響也は、やるときゃやる男なんだよ。ね。ちゃんと結果出したでしょ」


決める時、きっちり決めたでしょ。


そう言って、花菜ちんはじゃれつく3人を見つめた。