なんて。


なんて優しい顔をして笑うんだろう。


あたしが彼女だから?


彼女になると、こんな特別な笑顔を独り占めできてしまうのか。


「甘ったれは嫌い? 迷惑か?」


あたしが聞くと、補欠は目を半分にして笑って、ポケットに両手を突っ込んだ。


「全然」


「そっかあー!」


それならば、と飛び付こうとした瞬間、


「けど!」


補欠は大慌てでポケットから両手を出して、あたしを制した。


「人前でそういうのはだめだ」


恥ずかしすぎる、そう言って補欠はくすぐったそうに笑った。


隣で、健吾がぶつぶつ小言をもらしていた。


その時、ヒュッと一台の自転車が隣の駐輪場に入って来た。


「あーっ! 翠ちゃん」


その自転車の後ろに乗っていたのは花菜ちんだった。


「モーニン、花菜ちん」


花菜ちんの彼氏が、補欠に寄り添うあたしを見て優しげに笑った。


「良かったね。吉田さん」


事のなりゆきは、おそらく彼女である花菜ちんから聞いているのだろう。


自転車から降りた花菜ちんが微笑みながら歩いて来る。


「やっと成就したかあ。はー。じれったかったあ」