「……うるせ」


補欠は耳まで真っ赤になって、駐輪場まで自転車を加速させた。


後ろをみると、やっぱり健吾がヘロヘロ追い掛けてくる。


ヘロヘロ走らせてくる健吾を、


「邪魔だ! もっと端っこ走れ!」


と横からど突いたのは結衣で、健吾はその力に逆らうことなく横へぐらりと倒れそうになりながら、しぶとくヘロヘロと向かって来る。


「……踏んだり蹴ったりとは、このことをいう」


と駐輪場にヘロヘローと入ってきて、健吾はがっくり肩を落とした。


「ざまあ味噌漬け」


駐輪場に着いても補欠に抱き付いていると、補欠はちょっと困ったように背中を丸めた。


「翠……あのさ」


「なんだ」


「学校着いたから。降りてくれないと教室行けない」


「ああ、すまん」


本当は全然、これっぽっちも離れたくないけど。


あたしはしぶしぶ自転車から降りた。


カゴから鞄を取り出すあたしに、補欠は笑いながら呟いた。


「意外」


「何がだ」



クク、と笑いをこらえながら、補欠は自転車に施錠した。


そして、スポーツバッグを背負って、あたしの頭をポンと弾く。


「まさか、翠がこんなに甘ったれだと思わなかった」