「行こうぜ」


そう言って、補欠はペダルを踏み込んだ。


「破滅だ。崩壊だ。これは……セカンドインパクトだ。ビッグバーン」


ぶつぶつ呟きながら、健吾が自転車をヘロヘロ走らせてあとからついてくる。


あたしはたぶん今、世界で一番幸せな16歳なんじゃないだろうか。


あたしも、補欠がいい。


他の男は嫌だ。


補欠じゃないとやだ。


学校までの道のりを、あたしはひたすら補欠にしがみついた。












校門をくぐった時、すぐに分かった。


黒髪の生徒がゾロゾロ歩く中、やたらと目立つ赤毛頭。


結衣だ。


隣に並んで歩いていたのは明里だった。


自転車がふたりを追い越した瞬間に、あたしは左手を上げて笑った。


「ヘーイ! 結衣、明里!」


「「……え」」


ふたりはビタリと立ち止まり、口をあんぐりさせて固まった。


ブンブン手を振るあたしを見たふたりは、顔を見合わせたあと、物凄い勢いで追い掛けてくる。


ギエー、と悲鳴を上げたのは、


「どうなってんだー!」


赤毛のアン。


「夏井ー、てんめえー! やるじゃねえかあーっ!」


と満開の笑顔は、明里。