タッタッタッタッ……


スニーカーの底のゴムがアスファルトを弾く音を、辺りに響かせながら。


「何者じゃ、あいつは」


あやつも怪盗ルパン気取りの不法侵入者か。


もしくは、怪盗一族の一派なのか。


誰も居ない高校に忍び込むやつなんてあたしくらいだ、と優越感と高揚感に浸っていたのに。


坊主頭だったことから男だということは分かったけど、ハッキリと顔を確認することはできなかった。


少し緩めのジーンズに、真っ白なスニーカー。


水色のストライプ柄のシャツ。


至ってシンプルな服装で、彼は脇目もくれず一目散に駆け抜けて行った。


その後も、なぜか彼から目を離すことができなかった。


「お……おいおいおい」


それはいかんだろう、と思いつつもその行動から目を離すことができない。


カシャン、カシャン、カシャ……。


彼は野球グラウンドの緑色のフェンスの一番低い位置を選び、するすると登り始めた。


そして、またもやひらりと飛び越えたと思ったら、ストンと土の上に着地した。


さっきまでのパステルカラーの空が、薄い茜色と混ざり始めていた。


グラウンドに降り立った彼はしきりに辺りを気にしながら、ゆっくりと歩き出した。


そして、マウンドの上まで行くとピタリと立ち止まった。