その音はまるで木霊のように、隣の野球グラウンドにまで響いた。


「はっ?」


木の陰から裏門の様子をうかがい、無意識の中で声を漏らしていた。


「……うそだべ」


ガシャリ、ガシャリ、と音を立てながら激しく揺れる鉄格子。


人影は夕陽のせいでシルエットになりながら、鉄格子をよじ登る。


正門の鉄格子よりもある高さのそれを、簡単に登って来るのだ。


けっこうな高さなのに。


そのシルエットは夕陽色に発光しながら、3メートルはあると思われる高さから、ふわりと、跳んだ。


「あっ……」


あたしは木の幹に爪を立てて、くっと息を止めた。


あの高さ……さすがに危ない!


スタッ、と軽快な着地の音にゴクリと息を飲み込んだ。


「……すげ」


信じられん。


鉄格子をよじ登ったシルエットは、まるで野良猫のようだった。


軽い身のこなしで、ふうわりとアスファルトに着地した。


鮮烈だった。


3メートルもの高さから人間が跳ぶのを、華麗に着地する瞬間を、あたしは初めて見た。


怖いもの知らずのあたしでさえ、あの高さは怖じ気づいてしまうかもしれないのに。


そして、直後、人影はあたしが身を潜める木の横を駆け抜けて行ったのだ。