アジトの偵察とうたいつつ、これは完全なる不法侵入なわけで。


入学式前日に、こんなつまらんことで問題を起こしたら、頑張った勉強も水の泡だ。


母が、泣くかもしれん。


父も、草場の陰で悲しむだろう。


「アーメン」


入学式前日の夕方に忍び込んだあたしは、立派な不審者だ。


神よ。


懺悔します。


不審者のあたしを、どうかお許し下さい。


と祈りながら、あたしはハッとした。


しかし、だ。


よくよく考えてみると、さっきのあやつも不審者じゃんか。


もし、南高関係者なら、堂々と正門を開けて入るに違いない。


何故に、裏門から入ろうとしていたのだろう。


「ええーい。考えていても何も始まらん。思い立ったら行動あるのみ!」


見つからぬうちに、脱出だ。


立ち上がった時、再び一台の自転車が裏門前で急ブレーキをかけた。


キイッ!


「うわっ、また来やがった」


あやつだ。


あたしは一番近くに立っていた木に、とっさに身を隠した。


「戻って来んなよ」


ガシャッ、ガシャンッ……


「……え」


ガシャンッ!


鉄格子が、さっきとはまた違う大きな音を立てて、グラグラ揺れていた。