見つかったらやばい。


怒られるのは必須だ。


寝転んだ中庭の左手には、緑色のフェンスで囲われた野球グラウンドがある。


ずっと奥に続いている通路の向こうには裏門があって、その鉄格子越しに確かに人影があった。


「ヘ……ヘルプミー……」


小声で呟く。


「ノーマネー」


とっさに芝生に伏せ身をとって、様子をうかがった。


鉄格子の向こうに一台の自転車と、人影が見える。


一瞬の隙を突いて逃げよう。


そう思って構えた、その時だった。


ガシャンッ、ガシャンッ!


人影は鉄格子を掴んで、開かないものかと言わんばかりに力ずくで揺らした。


ガシャンッ!


でも、諦めたのか、乗って来たと思われる自転車に飛び乗り、正門がある方向へ行ってしまった。


「びっくりさせんなよ、ユー!」


ほっと胸をなで下ろしつつ、少し心配になった。


自転車が向かった方向が、正門の方だったからだ。


もし、南高の関係者だとすれば、あたしを待っている結衣が質問責めにあうかもしれない。


でも、頭のキレる結衣のことだ。


何かしらごまかして、うまくかわしてくれるに違いない。


問題は、このあたしだ。