わくわくした。


と言っても、怪盗になって物を盗む気はないけど。


ただ、誰も居ない南高に忍び込んでいる。


その現実に惚れ惚れした。


広い敷地内にぐるりと一周したところで、中庭の芝生にごろりと寝転がった。


そうか。


ここが、あたしの母校になるのか。


「超得した気分じゃー。結衣も来れば良かったのに」


上空に広がるパステルカラーの空は、巨大なパノラマみたいだ。


撮影して結衣に写メを送ってやろうと思い、ショートパンツのポケットに左手を突っ込んだ。


「あっ!」


しまった。


「結衣に預けて来たんだ」


吸い込まれそうなほど、空はきれいだった。


パステルカラーの空をゆっくり流れる雲は、ヨーロッパ貴族のように優雅だ。


「うーん。何とも言えん」


あたしは大の字になって、胸いっぱいに空気を吸い込む。


空の水色まで吸い込んだ気分に酔いしれながら、まぶたを閉じた瞬間、あたしは確かにその音を聞いた。


キイッ!


「ぬっ……?」


ハッとして飛び起きた。


音がした方をじっと見つめながら、息を殺す。


「やべ、誰か来た」


南高の関係者かもしれない。