レオニードが階段を下りていく足音を聞きながら、みなもは天井を仰ぐ。

(もう、ここにいる理由はなくなった)

 最初から仲間の行方が分かるまでの滞在だった。
 遠かれ遅かれ、この地を離れることになったのだ。
 それが願わない形で、唐突にやって来たというだけのこと。
 覚悟はしていたはずなのに、身を引き千切られるような思いに襲われる。

 温かなこの場所から離れたくない。
 彼の隣から離れたくない。
 
 気がつくとみなもの拳は固く握られ、ナイフで切った指先から全身へ痛みが広がっていた。

 この痛みが、自分に与えられている役目を突きつけてくる。

 まだ仲間が生き残っている以上、『守り葉』として戦わなければいけない。
 たとえ自分の身を犠牲にしてでも。
 手にしたものをすべて失うことになったとしても――。