こんな形で仲間の生存を確かめたくはなかった。
 レオニードの命を奪いかけ、国を苦しめる毒が仲間の手で作られたと思うだけで、頭には怒りが巡り、胸は慟哭で張り裂けそうになる。
 かろうじて残っている理性のおかげで、見苦しく取り乱すことは抑えられていた。

 事態は一刻を争う。動揺して遅れる訳にはいかない。
 みなもは唇を噛み締めて心の揺れを抑えこむと、レオニードへ小瓶を手渡した。

「悪いけど、下に解毒剤を届けてくれるかな? あと……しばらく一人にして欲しい」

 レオニードを見上げると、同情とも哀れみとも取れる眼差しでこちらを見つめている。
 言葉を紡ごうとする口の動きに気づき、みなもは小首を振り、目に力を入れた。

 彼のことだから、きっと慰めの言葉が出てくるだろう。
 ただ、今はその慰めを言われるだけ、自分が許せなくなる。
 
 こちらの思いが伝わったらしく、レオニードは「分かった。届けてくる」と言って後ろへ下がり、部屋から出ていった。
 扉が閉まる間際まで、みなもを心配そうな目で見つめながら。