自分も仮眠を取って、やり過ごしたほうがいいかもしれない。
 そうは思っても、レオニードはみなもから目を離せず、息を呑む。
 
 次第に寝息が乱れ、みなもが辛そうにうめく。
 そして口を動かし、どうにか聞き取れる声で呟いた。

「いずみ、姉さん……」

 高く澄んだ声に、レオニードは固まる。

 どう聞いても、男が出せる声ではない。
 あまりに柔らかく、甘さすら漂っている。

(まさか、本当は女性なのか! ……い、いや、単に歳を誤魔化しているだけかもしれない)

 まだ声変わりを迎えていない少年ならば、今の声も腑に落ちる。
 だが、もう一つの可能性が頭から離れない。

 どちらにしても、己を見せたがらないみなもにとって、知られたくないことだろう。
 見るに見かね、レオニードは立ち上がってみなもの肩を揺すった。

「みなも、起きろ。大丈夫か?」

 すぐにみなもは目を開けず、うなされ続ける。
 と、急に置き上がり――レオニードの胸元へ抱きついてきた。

「姉さん、行かないで!」

 不意打ちの締め付けと涙声に、レオニードの胸が詰まる。
 身内と離れた時の夢を見ていたのだろう。そう思うと不憫でならない。

 みなもを落ち着かせようと、レオニードは彼の背中を撫でようとした。
 手に、何か硬いものが当たる。

(これは……胸当てか?)

 疑問に思った矢先、みなもの体が弾かれたように離れた。

 紅潮した頬から色香が漂い、レオニードの鼓動が大きく脈打つ。
 睫毛を伏せて細い長息を吐くと、みなもは立てた膝に腕を乗せてうつむいた。