人の命がかかっているのに、見返りを求めるのは気が引ける。
 しかし、今まで分からなかった仲間の情報がつかめた今、この機会を逃したくない。

 しばらく沈黙した後、レオニードは小さく頷いた。

「分かった、条件を飲もう。ただ、詳しいことはヴェリシアに戻らなければ分からない。だから――」

「それなら俺もレオニードと一緒にヴェリシアへ行くよ。ここにいても、またバルディグの追手に襲われるかもしれないしね。それに、貴方の体も回復していないから治療も続けないとね」

 今レオニードに死なれては困る。
 移動中に容態が急変しないよう、細心の注意を払っていかなければ。
 追手に襲われた時のために、護身の道具も用意しなければ。

 そう考えている自分に気づき、みなもは心の中で失笑する。

(まさか俺が北方の人間を守る日が来るとは思わなかった。……仲間と会えるなら、これぐらい――)

 不意にレオニードから「みなも」と呼ばれ、我に返る。
 目の前では表情の乏しかった彼が、珍しく微笑を浮かべていた。

「ありがとう。迷惑をかけてすまない」

 こんな顔で笑うんだ、この人。
 いつも険しい顔や、熱や傷に苦しむ顔しか見ていなかったので、みなもの目にはとても新鮮に映った。

 ほんの少しだけ、利用する代わりに彼の力になりたいと思えた。