一瞬、意識が真っ白に弾けて、ナウムの言葉が入ってこなかった。
 けれど、一旦通り過ぎた言葉がジワジワと染み出し、頭の中で呪文のように繰り返し響く。

 コイツのせいで、みんなが犠牲になった……?

 全身の血が目まぐるしく流れ、みなもの胸を高ぶらせていく。
 感情が口から走り出しそうになり、唇を噛んでどうにか己を抑える。

 息を吐いて高ぶりを抜いていくと、みなもは冷めた目をナウムに向けた。

「信じられないな。あの時、一人前にもなっていなかったお前に、そんな真似ができるとは思えない」

「ああ、そうだな。じゃあ厳密に言おう……一族を売ったのはオレの親父や、商隊の連中だ。そしてオレは親父を手伝っていたんだ」

 確かにそれなら話は分かる。一気にみなもの中で現実味が増した。
 それでも素直に聞き入れられない。
 こちらの怒りを煽るような嘘をつき、殺すように仕向けている可能性も十分に考えられる。

 嘘か真か判断つかず、みなもが困惑していると――。

「腹立たしいが、言っていることは本当だぞ」

 いつの間にか部屋に入ってきた浪司が、腕を組み、険しい目でナウムを見下ろした。