バルディグの王城が見えてきたのは、ヴェリシアを出立して三日後のことだった。
ずっと馬車に揺られ、ナウムと膝を突き合わせなければいけない状況で、みなもの悪心は酷いものだった。
しかしナウムに弱ったところを見せたくないと、懸命に酔いをこらえていた。
だから王城が馬車の窓から見えた瞬間、みなもは安堵の息を吐いて城を眺めた。
消炭色の見るからに堅固な佇まいは、城というよりも要塞に近い。そんな城に合わせたように、城下街の建物もほとんどが灰色のレンガで作られていた。
ヴェリシアよりも北側にあるためか、バルディグはまだ冬の寒さが残っている。
もう少し暖かくなれば、花壇や街路樹から色が溢れ、また違った姿を見せてくれるのかもしれない。が、まだその気配はなく、とても重苦しい空気が流れているように見えた。
寒さに震えるいずみの姿が脳裏に浮かび、みなもは目を細めた。
「ナウム、街へ着いたら真っ先に姉さんに会わせて欲しい」
「もちろんだ……と言いたいところだが、先に会ってもらわなきゃならねぇヤツがいる。その後に、すぐ会わせてやるよ」
心なしか煩わしそうなナウムの声に、みなもは心の中で小首を傾げる。
「一体、俺を誰と会わせるつもりだ?」
ナウムは答えかけたが、ニイィと笑い、前へ身を乗り出してみなもに顔を近づけた。
「会ってからのお楽しみだ。お前はヴェリシアを出てから、ずっと冷たい仮面みたいな顔してるからな。どんな風に驚くか見てみたい」
ずっと馬車に揺られ、ナウムと膝を突き合わせなければいけない状況で、みなもの悪心は酷いものだった。
しかしナウムに弱ったところを見せたくないと、懸命に酔いをこらえていた。
だから王城が馬車の窓から見えた瞬間、みなもは安堵の息を吐いて城を眺めた。
消炭色の見るからに堅固な佇まいは、城というよりも要塞に近い。そんな城に合わせたように、城下街の建物もほとんどが灰色のレンガで作られていた。
ヴェリシアよりも北側にあるためか、バルディグはまだ冬の寒さが残っている。
もう少し暖かくなれば、花壇や街路樹から色が溢れ、また違った姿を見せてくれるのかもしれない。が、まだその気配はなく、とても重苦しい空気が流れているように見えた。
寒さに震えるいずみの姿が脳裏に浮かび、みなもは目を細めた。
「ナウム、街へ着いたら真っ先に姉さんに会わせて欲しい」
「もちろんだ……と言いたいところだが、先に会ってもらわなきゃならねぇヤツがいる。その後に、すぐ会わせてやるよ」
心なしか煩わしそうなナウムの声に、みなもは心の中で小首を傾げる。
「一体、俺を誰と会わせるつもりだ?」
ナウムは答えかけたが、ニイィと笑い、前へ身を乗り出してみなもに顔を近づけた。
「会ってからのお楽しみだ。お前はヴェリシアを出てから、ずっと冷たい仮面みたいな顔してるからな。どんな風に驚くか見てみたい」