その日、学校に行くと両目を腫らした愛さんがいた。


「おはよう。」

「阿木さん…おはよ!昨日はごめんね?変なところ見せちゃって…」

「いえ…あの、昨日から気になっていたんですが…」


あなたは何を不安がっていて、私の何が羨ましいのですか?


と、言おうとした…私の口を塞いだのは…クラスメイトの皆さん。


「阿木さんって和泉先輩と知り合いなの?」

「もしかして、お嬢様っ?!」

「どんな関係っ?!」



と、昨日のことを問い掛ける皆さんにオロオロしてしまう…けど言わないといけない。


「私と紫輝さんは…父親同士の仲がよくて…」


愛さんを見ると、少し暗くなる表情ーその表情は…紫輝さんと重なって…


「婚約者です。」


「っ、」


その言葉を聞くと、愛さんは教室を飛び出して行った。


「えーっ?!?!愛はっ?」

「婚約者っ?!」


愛さんと紫輝さんの関係をご存知のクラスメイトの皆さんは驚きの表情を隠せず…


「婚約者、ですが断られましたの。愛さんがいらっしゃるから…転校してきた理由は、紫輝さんを慕っているからです。」


「すごー、」

「自信満々だね、」


自信…


「自信なんて、これっぽっちもございません。ただ…」


私は………


「紫輝さんが幸せになる道を見たいだけですの。」