「相良君、やめて?私わかってるから…」
誰も何も発しない…沈黙した空気の中…愛さんはそう一言…口にした。
「愛…?」
「…わかってるよ。私…わかってるから…全部…わかってる。」
「……………」
二人が何の話しをしているのか、私にはわからない…だから、私は何もいわず…二人を見ていることしか出来なかった…
「阿木さん…ゴメンね?紫輝先輩のこと…私…わかってるから。紫輝先輩と私は不釣り合いだって……だって先輩は私とは違う…家柄だって環境だって…彼の…将来は…輝かしいものだって…私が邪魔しちゃいけないって。」
「…愛…さん?」
「おい、愛っ!!こんな奴に弱み見せんなっ!やめろよっ!!」
「相良君…」
愛さんは相良さんを睨み…また、優しい口調で話はじめた…。
「だから、私は消えるよ…あと、もう少しだけ…あと…少しだから……私のわがままを聞いて?お願い………します。」
彼女は涙ながらにそう言って…頭を深く下げた。
何を?私に願っているの?
わからない……
だけど、私は………
“はい”と頷くことしか出来なかった。