「へ」





「いや、綾瀬ってクラスでも大人しいほうだし、生徒会長って感じじゃないから、意外だなあって思ってたんだ、俺。それで、なんでかなーって……」





「あ……あぁ、それは、その、まぁ……」





「しょっぱい青春」のためだよ、などと言えるわけがない。





「あ、や、べつに言いたくないんならいいよ。ちょっと気になっただけだしさ」





ーー助かった。





二人が生徒会室にたどり着くと、すでに女子生徒が一人いた。





真っ黒な長い髪に、優しげな瞳。大和撫子という言葉がしっくりくるその姿。彼女は二人に気づくと、優雅に微笑んだ。





「ああ、綾瀬くんに海野くん、だったっけ。遅かったね」





外見に反する気さくな話し方に、綾瀬くんは少しとまどいながらも「どうも」と軽く会釈をした。





しかし綾瀬くんに対して、海野くんはまったくの無反応だった。ただぼーっと、彼女を見つめているだけだ。





どうしたのだろうと思い、綾瀬くんは「海野くん?」と声をかけてみた。





「え?え、あ、あ……その、どうも」





なにがあったのだろう? 綾瀬くんは不思議に思った。