須藤さんは、びっと綾瀬くんを指さした。





「綾瀬くん、あたしが君の正体を、解き明かしてみせる。新聞部部長の名にかけて!」





そこで綾瀬くんは確信した。





ーーああ、やっぱりだ。この人は……いや、これは……!





「以上。じゃあね!」





須藤さんは満足げな顔を見せたかと思うと、くるりときびすを返して去っていった。





ーーあれは!





そう、須藤さんは、綾瀬くんが最も嫌う、あれそのものだった。





ーー「あまずっぱい青春」!





まぶしく輝く瞳、はきはきとしているが、芝居がかった口調。今思い出してみると、背中がむずがゆくなる。ああ、なんで僕は、あれとチビを重ねて見ていたんだろう。ちっとも似てなかったじゃないか! あれは「あまずっぱい青春」を手に入れている者なんかじゃない、「あまずっぱい青春」そのもの! 嗚呼、忌々しい!





綾瀬くんはふと、彼女の言葉を思い出した。





『あたしが君の正体を、解き明かしてみせる』





なんということだろう、須藤さんは「あまずっぱい青春」であると同時に、綾瀬くんの密かな野望を知ってしまうかもしれない!





……などということは、綾瀬くんが須藤さんに自分のことを打ち明けることさえなければ、まずないと考えてよかった。ただ、このときの綾瀬くんは須藤さんがあまりに恐ろしくて、頭のなかが混乱していたのだった。




綾瀬くんは、自分の胸に手をあてた。鼓動は、須藤さんに出会う前よりずっと高鳴っていたのだった。